肺炎球菌ワクチンが新しくなりました!
令和6年4月1日から「15価肺炎球菌ワクチン」の適応が小児にも拡大されました。
今回は肺炎球菌とは何か、ワクチンを接種することでどのようなリスクを予防できるのかについてご紹介していきます。
これまでも肺炎球菌ワクチンは定期接種でしたが、何が変わったのかについてもご紹介しますので、是非最後まで読んでみて下さい。
肺炎球菌とは
肺炎球菌は、乳幼児の鼻や喉に高い確率で住み着いており、咳やくしゃみなどの飛沫によって感染します(飛沫感染)。
園児の90%程度が保菌(菌が体に住み着いている状態)と言われていますが、
肺炎球菌が住み着いていても、症状が無いことのことの方が多く、免疫力や抵抗力が低下することで発症する可能性があります。
通常は発熱や風邪症状のみですが、本来ウイルスや菌がいない(無菌)の部位に肺炎球菌が侵入してしまうと、危険な状態になってしまいます。
肺炎球菌は、細かく分けると実は90種類以上存在すると言われています。
今まで定期接種になっていた13価肺炎球菌ワクチンの「13価」とは、13種類の肺炎球菌のことです。
つまり、13種類の肺炎球菌を予防できるワクチンということになります。
肺炎球菌にかかるとどうなる?
もともと保菌していた肺炎球菌が、風邪をきっかけにして肺に侵入すると「肺炎」、耳に侵入すると「中耳炎」を引き起こします。
これが喉や肺、耳などに留まらずに、本来菌のいるはずの無い血液の中や髄液(脳や脊髄を守る液体)に菌が入ると、
非常に危険な「侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)」という病気になります。
肺炎球菌ワクチンが導入される前は、
侵襲性肺炎球菌感染症による
致死率は6〜7%
後遺症(脳障害や聴力障害)は30%
とどちらも非常に高い状況でしたが、
現在は肺炎球菌のワクチンが定期接種化されたことにより侵襲性肺炎球菌感染症は激減しています。
2歳未満のお子さんは特に重症化のリスクが高いため、2ヶ月を過ぎたら早めにワクチン接種することが大切です。
肺炎球菌ワクチンの効果は?
先述した通り、肺炎球菌ワクチンは90種類以上存在していますが、
たったの13価や15価のワクチンで予防ができるのか?と思われた方も多いのではないでしょうか。
しかし、侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こす肺炎球菌のうち90%以上が13価肺炎球菌ワクチンの中に含まれており、高い予防効果があります。
13価肺炎球菌ワクチンが定期接種化されてからは、髄膜炎や敗血症など命に関わるような重大な病気を発症する方は、定期接種前から比べ80%以上減少しました。
何が変わったの?
これまで使用していた13価肺炎球菌ワクチンは13種類の肺炎球菌を含むワクチンでしたが、15価肺炎球菌になり15種類の肺炎球菌を含むワクチンになりました。
今までに比べ2種類の肺炎球菌が追加され、肺炎球菌による感染を予防できる範囲が広くなっています。
ワクチンの種類は統一する必要はあるか?
すでに13価肺炎球菌ワクチンで接種を開始している方も、令和6年4月1日以降は基本的に15価肺炎球菌ワクチンに切り替えて接種となります。
初回接種から接種完了までの肺炎球菌ワクチンの種類を統一することは必須ではありません。
当院でもすでに15価肺炎球菌ワクチンへ切り替えて、接種を進めております。
接種スケジュール・接種方法について
接種スケジュールや接種量・接種方法について、13価と15価の肺炎球菌ワクチンで違いはありません。
生後6ヶ月を過ぎた頃から、肺炎球菌による細菌性髄膜炎が増えてきます。
それまでに免疫をつけるために6ヶ月までに3回の接種を終わらせることが大切になります。
特に、生後半年までの予防接種は種類や本数が多い為、生後2ヶ月を迎えたらすぐに接種を開始しましょう。
生後2ヶ月に打つ、B型肝炎ワクチン・5種混合(又は4種混合+Hib)ワクチン・ロタワクチンとの同時接種がおすすめです!
(接種スケジュール)
初回接種は、生後2か月〜7か月未満に開始し、27日以上の間隔をおいて3回接種します。
追加接種は、生後12か月〜15か月の間に、初回接種の3回目終了後60日以上の間隔をおいて1回接種します。
(接種量・接種方法)
接種量は0.5mlで、接種方法は上腕又は大腿の皮下(皮膚の下の脂肪)に注射での接種となります。
おわりに
ワクチンは日々進化しており、守れる命も増えてきています。
予防接種の重要性について再度理解を深めていただき、適切に予防接種を進めて行きましょう。
なにかご不明な点がありましたら、遠慮せず当院のスタッフに聞いてみて下さいね。
【参考文献】
・2023予防接種に関するQ&A集|一般社団法人 日本ワクチン産業協会